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凌霄花

 この漢字だけ示されたらなんと読んだらいいか途方に暮れてしまう。「凌」は凌ぐ、「霄」はそらと訓読みするらしく、あわせて「空をしのぐ花」とでもいうような意味になるのだろうか。平安朝の頃に大陸から渡来したものらしく、中国名そのままに読みだけ変転して「のうぜんかずら」となったものとされている。梅雨のころから夏の終盤まで花期は長く、旺盛に蔓を伸ばして他の樹木や塀などを覆うように成長し、夏空をバックに鮮やかなオレンジ色の漏斗状の花を次々とつけるさまは、まさに天に伸びる花のような気がしないでもない。感覚的には熱帯方面の花で、日本には古来からこういうインパクトのある花はなかったかもしれず、平安びとはあらたに日本名などつける気がそがれてしまったのかもしれないとも思わせるところがありますね。
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 ところで今日は森鴎外の忌日ですね。大正11(1922)年のこの日、61歳で亡くなりました。前日に口述で残した遺書は次のようなものであります。
「余ハ少年ノ時ヨリ老死ニ至ルマデ一切秘密無ク交際シタル友ハ賀古鶴所君ナリ、コヽニ死ニ臨ンテ賀古君ノ一筆ヲ煩ハス、死ハ一切ヲ打チ切ル重大事件ナリ、奈何ナル官憲威力ト雖、此ニ反抗スル事ヲ得スト信ス、余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス、宮内省陸軍皆縁故アレドモ、生死別ルヽ瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辭ス、森林太郎トシテ死セントス、墓ハ森林太郎墓ノ外一字モホル可ラス、書ハ中村不折ニ依託シ宮内省陸軍ノ榮典ハ絶對ニ取リヤメヲ請フ、手續ハソレゾレアルベシ、コレ唯一ノ友人ニ云ヒ殘スモノニシテ何人ノ容喙ヲモ許サス」
 遺言どおり中村不折の書で、三鷹禅林寺や故郷津和野永明寺にある墓石には簡潔に「森林太郎墓」と刻まれるだけでありますね。三鷹禅林寺にはこの遺言を刻した碑もあります。
by fuefukin | 2009-07-09 10:21 | 花の写真

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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