わたくしの小さなころ、こういう魚を見たり観察した記憶がありません。もちろん食べたことも。漢字では川鯥、学名
Nipponocypris temminckii 。コイ目・コイ科・ダニオ亜科(ラスボラ亜科、ハエジャコ亜科とも)に分類される淡水魚でありますね。事典には、主に西日本と東アジアに分布とありますから、もともと西の魚だったのですね。東日本では70年代から徐々に生息場所を拡大してきたらしく、わたくしが農業用水路や小さな沼で釣りや網などで魚と遊んでいた時代はもう少し前ですから、道理で記憶にないはずです。そういえばオイカワというやはりコイ科の魚も、もともと東日本にはいなかった。各地の河川に放流する琵琶湖の稚鮎に混じってやってきたらしいが、真偽は定かではありません。
多摩川の支流の小さな堰堤の下で夕刻、毛針を振ると、婚姻色♂のカワムツが飛びついてきました。流れの中心で餌を漁っていたらしく、毛針が浮いて流れ出した瞬間に反応し、二度、三度失敗したもののあきらめずに毛針を追い、針にかかったのがこれであります。#16のカディスをすっぽり銜えて、水中からひきずり出されたのが悔しいような不思議なようなおかしな表情でありますね。針を外して浅瀬に浸けてやると、あっという間に流れに戻っていきました。