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サクランボ

 ちょうど去年の今頃、トルコ中部を旅していた。苦節何十年などという長い時間ではないが、比較的長く続いた勤めを辞めるにあたり、残った有給休暇を使ってしまおうと出かけたのであった。結局休暇は全部使い切れなかったが。
 地中海沿岸の遺跡を巡り、イズミールという港町からアナトリア内陸部に入り、アンカラに至るというお定まりの観光コースである。10年以上も前に同じコースを辿ったが、その時は季節は冬だったので、緑なすアナトリアの高地を旅してみたいというのはその時以来の念願だった。
 同じトルコにサフランボルという世界遺産に指定されている古い町がある。そこは周辺が高級香辛料のサフランの産地であることからそんな町の名前になったらしいが、アナトリアのこのあたりではサクランボが盛期であった。街道沿いに農家直売の露店が次々にあらわれてくる。
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 少年が店番をしているそんな露店のひとつを訪ね、3キロばかり買った。日本のサクランボのように可憐で瀟洒な宝石のようなそれではない。大柄で逞しい色黒のアメリカンタイプである。入れてくれたポリ袋を手に下げると、ずしりと重く、なんだかずいぶんと財布をはたいてしまったかのような気もしたが、なんのことはない数百円ばかりのものである。少年に、トルコにはサフランボルがあるが、日本語でこれをサクランボというのだよと教えてあげたが、どうもジョークは通じなかったようだ。
 標高がやや高くなってくると、あちこちに白い花をつけた畑があらわれてくる。最初は綿花かとおもったが、そんなはずはない。季節が早すぎる。よく見ると、どうもポピーに似ている。そうか分かった。これはケシの花だ。
 日本でこんなに正々堂々と畑に植えていたら警察や役所が飛んで来て、あっという間に火焔放射器で焼かれてしまう。栽培そのものも禁止されているからだ。
サクランボ_d0054076_1614865.jpg

by fuefukin | 2005-06-17 16:06 | 旅の写真

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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