キンモクセイ
2008年 10月 07日
西多摩近辺では、2、3日前からキンモクセイの香りがただようになりました。その香りでむかし読んだある詩を思い出して、あっちでもない、こっちでもないと家の本棚をひっくりかえしながら探すのですが、まだたずね当たりません。さしてたくさんの詩集があるわけでもないのでありますが、どこかに必ずあるはずなのです。
その詩が書かれている状況というか舞台というか、内容は、つまりこういうのであります。
10月の雨のあとの湿った空気が風もなくよどんでいる夜。夜というよりはまだ夕刻からそんなに時間は経っていない。まだ寝るには早い時刻といったところ。風もないのにふいとキンモクセイの香りが流れてくる。その香りをかぐと、ああそうだ、亡くなった親族のうちのあわてん坊だった誰それの精霊が死んでからもあわてん坊で、闇を漂っているうちにこつんとキンモクセイの枝にぶつかってしまうのだ。キンモクセイの香りが風もないのに漂ってくるのはそんなとき。
かいつまんで言うとこんな詩なのでありますが、かんじんのその詩が載っている詩集が見つからないのであります。誰だったか、北陸地方在住の詩人の詩だったような記憶があるのでありますが、見つかってあらためて読んでみると、たぶんまったくイメージの違う詩かもしれません。でもわたくしの記憶にはこんなふうにしっかりと刻まれてしまっているのでありますね。あわてん坊の精霊がこつんとぶつかって枝を軽く揺すると、キンモクセイの香りが湿った空気にふわりとのっていくのですね。キンモクセイの花の香りはまさしくこれなのであります。
by fuefukin
| 2008-10-07 23:57