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やはらかにやなぎあをめる

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 昨日今日はちょっと肌寒いくらいの天候に戻ってしまいました。お花見も寒くてたいへんだったでしょう。写真は3日ほど前の多摩川河畔のもの。啄木が詠った北上川河畔の柳はちょうどこんな具合だったでしょうか。
 もう10年ほども以前のこと、啄木関連の本を作るにあたり、盛岡周辺を撮影取材のため3日ほどレンタカーで走り回ったことがありました。5月の連休のあとくらいだったか、残雪の岩手山に北上の流れ、桐の花が咲き、柳はもうすこしあおみを増していましたが、思わずこの歌が口をついて出ました。「泣けとごとくに」という最終行はあまりにも感傷的すぎて好きではありませんでしたが、五七音のDNAがしみついているのでしょうかねえ、すらすらと抵抗もなく口に出来たのは自分でもちょっと不思議でした。現代の短歌界では、ストレートにただ情景を描写し、心情をちょこっとだけ加えたに過ぎないこんな歌は評価もなにもされないのではないかしらん。まあそれが啄木の啄木たるゆえんではありますが。
 それよりさらに10年ほど前、夜行列車で盛岡駅に到着したのは夏のある朝のことでありました。駅から荷物を担いでまっすぐ、開運橋のたもとから川岸に降りて、短大生らしき女子学生たちが体操の朝練習をしているのを横目にカヤックを組み立て、テントほか一式を前後の荷室に押し込んで、いざ大平洋までと川下りに出発しました。結局この時は河原でテント2泊、海までという出航時の意気込みとはうらはらに、水沢あたりでネオンの街へ上陸してしまった記憶があります。

 ところでひさしぶりに多摩川河畔を散歩していると、去年まではなかったはずのこんな標識をみかけました。あるいは見過ごしていたか。
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 距離なんてふだん考えたこともなかったが、ふむ羽田空港のあたりまで50キロか。海まで50キロ。ひさしぶりにカヤックをかついで東京湾まで下ってみようかという気にさせられたことでした。
 ところでこの標識、散歩を続けるうちになんと1キロ置きに設置されているのが判明した。左岸とあるからには右岸にもあるのか。腹の立つことさんざんの河川行政だが、なかなか最近の役人にしては味なことをしてくれたと思ったのも束の間でありました。せいぜい5キロ置きくらいでよろしいではないか。それならば予算も五分の一で済む。ジョギングに必要だという意見があればもっと簡素なものでよろしい。何ごとも度を過ぎるといけません。おっとまた腹が立ってきた。
by fuefukin | 2007-04-02 16:32 | なにげない風景

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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