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バルカンへの旅 27. コトルの一夜

 旧都ツェティニェからスヴェティ・ステファンを遠望し、ブドヴァ市街を横目に見ながらコトルに戻った夜、旧市街の海洋博物館を会場に、セルビア・モンテネグロ駐日元代理大使だったチェレビッチ氏を中心とするみなさんが、わたくしたち日本からの一行と当地の市民・文化人との交流会を設営してくれました。
 時間になると2階の会場に続々とみなさんが集まり始め、わたくしたちも含めて100名近くにもなったでしょうか。地元テレビ局やメディアの取材クルーも来ていました。
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 まず伝統の合唱隊による歌がうたわれ、会がはじまります。この夜の特別プログラムはニェゴシュ『山の花環』(日本語版は彩流社発売)の日本語、セルビア語双方による朗読、朗唱でありました。邦訳者である田中、山崎両氏による朗読と、伝統楽器グスレ奏者による同じ部分の朗唱です。たとえばオスマン・トルコとの戦いを描くこんな場面。

 あの日のさまは見るも恐ろし。d0054076_12512295.jpg
 黒き煙は空を覆いて、
 寄するトルコは十万の兵、
 原をめぐりて銃声ひびき、
 壮士数千、閧をあぐれば、
 鴉の群れは鳴き騒ぎたり。
 闇のあとより陽のさしいでて、
 夕暮れまえに空も晴れたり。
 原にトルコの死者数あれど、
 みなの申すはまちまちにして、
 幾人なるや数をも知られず。

 これを日本語で朗読し、同じ場面を吟遊詩人(グスラル)が右の写真のように一弦琴グスレを弾きながらセルビア語でろうろうと詠うわけであります。なかなか簡単に経験できる情景ではありませんね。地元の方たちも熱心に聞き入っていました。
 今回の参加メンバーのなかでいちばん若い女子学生が着物で幾人かにお茶をいれて差し上げたり、筆で習字のやりかたを見せてあげたり、詩吟を朗唱したりするうちに、着物姿のモンテネグロ美人も交えて、コトルの夜はしずしずと更けていったのであります。
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by fuefukin | 2007-01-24 11:08 | バルカンへの旅(2)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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