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バルカンへの旅 24. 岩礁のマリア

 ツァブタットから小1時間もかからずにモンテネグロ国境を越えると、すぐにヘルツェグ・ノヴィの町。この町にノーベル賞作家アンドリッチは別荘を持っていたそうで、現在はレストランになっています。2階には地元の文芸家クラブの事務局があって、アンドリッチの著書や資料を展示してあります。入口の脇にはアンドリッチ像も据えられています。
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 わたくしたちはこのレストランの葡萄棚の下で、ヘルツェグ・ノヴィ市長はじめ文芸クラブ会長、セルビア.モンテネグロ駐日元代理大使ほかみなさんの歓迎を受け、ちょっと塩辛いけれどおいしいダルマチアの生ハムやチーズ、ワイン、ラキアで厚くもてなされました。なにしろメンバーの長がニェゴシュとアンドリッチの邦訳者でありますので、おこぼれにあずかったような次第でありました。
 飲みきれないラキアなどに後ろ髪を引かれつつヘルツェグ・ノヴィを出発、世界遺産の町コトルへの道を進みます。ここから直線距離にしたらコトルまで20キロばかりですが、アドリア海からティバト湾、コトル湾と内湾が連続し、複雑に海岸線が入り組んでいるので、湾沿いの道路は倍以上の距離になるでしょうか。
 途中のペラストという村で、わたくしたちはこんな船に乗り込みました。
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 ちょうど「世界で最も美しい25の湾」のうちのひとつに選ばれているというコトル湾の中央に小さく浮かんでいる島に渡るためです。衛星写真を借りるとこんな位置関係になります。
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 右にペラストの村、左に浮かんでいるふたつのうちの上のほうの島が「岩礁のマリア」と呼ばれている教会のある島です。15世紀の半ば、ふたりの漁師が朝霧の向こうに岩礁が光り輝き、そこに一枚のマリア像の描かれたイコンが漂着しているのを見つけたそうであります。そこで人びとは、舟で岩を運んでは沈めて小島をつくり、そのイコンをおさめる教会を建てました。この海の聖母の霊験はあらたかで、ここに祈るとどんな嵐もぴたりと止み、あらゆる海難から生還できると信じられていて、モンテネグロの海に関わって生活している人々の絶大な信仰を集めているそうであります。
 内部は残念ながら撮影禁止で、聖母のお姿はご紹介できません。
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付記
ベオグラードへの帰路、ティヴァト空港から搭乗したモンテネグロ・エアの飛行機は上昇しながらアドリア海上空で右旋回し、ちょうどコトル上空を飛行して北東へ進路を取りました。飛行機の左窓からうまい具合にコトル湾を見ることができました。ティバト湾と細い海峡でつながっているところの真ん中に「岩礁のマリア」教会の島があるのが分かると思います。コトル旧市街はこの湾の下方の奥まった場所に位置していますから、まあなんと実に見事な場所に築いたものと感心させられます。
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by fuefukin | 2007-01-22 00:06 | バルカンへの旅(2)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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