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ブナの森で

 ウィーンからバルカンへの旅のリポートの途中ですが、ちょっと息抜きに東京からみたら尾瀬の向こう側、福島県の檜枝岐のブナの森で紅葉とキノコ採りを楽しんできましたので、ちょっと写真をご覧ください。
「山と茸の会」という同好の集まりがあって越後の山などへ何度かご一緒しましたが、自分たちのキノコ採りが忙しく、ここ数年ごぶさたしていました。ひさしぶりにみなさんと出かけることになりました。
 三鷹駅に集合し、途中で参加者を拾って大泉から川口ジャンクション、東北道と走っていきますが、絶好の秋日和の週末、すいぶん車の数が多く、出はじめから渋滞状態。なんとか佐野のインターまでたどり着いたところ、栃木インターの手前あたりとかでトラックの横転事故。インターで用達しをしている間にあっという間に本道は車で埋まり、駐車場からさえ出られない羽目になってしまいました。結局1時間以上も無駄な時間を過ごすことになりました(帰路も同じところで自家用車2台の事故があって2時間近くのロスで、事故渋滞に悩まされた往復になりました)。
 ようやく目的地の檜枝岐に到着したのは、山あいの土地でありますから、もう山の端に日も入ろううかという時刻でしたが、そこはキノコ好きの連中、宿に入る前にひと勝負とばかり、てんでに森に分け入ります。わたくしはここでチャナメツムタケを30本ばかり、クリタケはちょっと過ぎたのを何株か見つけましたがパスです。
 檜枝岐本村の民宿でおいしい蕎麦をはじめ山の幸をたっぷりといただき、ひさしぶりのお酒と談笑の宵を過ごして、さて翌朝、新潟県との県境のブナの森に入ります。
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 標高1500メートルほど以上のブナやカンバやミズナラの黄葉やモミジやカエデの紅葉は若干盛りを過ぎていましたが、沢筋に降りるとまだまだきれいで、日が差し込むといっそう色が輝き映えますね。ブナの森を通ってきた水は冷涼で、さわやかにのどを潤してくれます。キノコ探しに夢中になって地面ばかりに目をこらして森を歩き回っているうち、ひょいと頭をあげると、こんなものが目に飛び込んできました。
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 ブナの幹にまず「幸男」という文字が読み取れました。ああ、名前だなと把握するまで、およそ数秒。上に「大正三」とあるのが判明するまではそんなにかかりませんでした。左には「角吉」さんという名前、「幸男」さんの下には年齢とおぼしき「廿三」、「角吉」さんの年齢はちょっと読み取れません。立った位置より少し上方にあるので、たぶん雪のある時期に彫ったものと推定されます。
 大正3年というといまから92年前、23歳の幸男さんが生きていれば115歳前後ですが、まあたぶん亡くなっているでしょう。この大正3年、1914年は第一次世界大戦の始まった年、サラエボ事件の起きた年であります。ウィーンに続いてリポートをアップする予定ですが、わたくしがサラエボ事件の現場を再訪したのはなんとつい先月、ちょうど1ヶ月前の10月1日のことでありました。偶然にもブナの森で年号が一致しました。
 出征前に木の幹に名前を彫り込むというのは、山国ではかなり行われていたようであります。日本国はやがてシベリア出兵を始めますが、シベリアという土地を考慮して、兵隊はかなりの率で雪国出身者で揃えたようであります。実際、新潟県の高田や村松から連隊がシベリアに送り込まれています。この二人の若者も、出征にあたって雪の上で自らの名前をブナに彫り込んで酒を酌み交わし、兵営に入ってやがてシベリアの大地を踏んだのだろうかと、想像の翼は色鮮やかなブナの森の天空の高みへはばたいてしまうのであります。


 追記
 ついでながら、サラエボに向かうのにまずウィーンへ飛ぶオーストリア航空の機中からこれまた偶然にこのあたりを撮影しておりました。小さな写真にすると分かりにくいので、すこし説明を入れておきました。9月24日午前11時頃の映像であります。
ブナの森で_d0054076_12303858.jpg

by fuefukin | 2006-11-01 09:32 | 森のキノコ | Comments(0)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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