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8 川のそばでもう一泊

 予定ではここに来て最初にひと晩泊まった、村からちょっと離れたゲル・キャンプに戻るばずだった。しかし翌早朝にはウランバートルへ向けて出発しなければならないという最後の最後になって、釣り人の性がむくむくと立ち上がってきたのだ。誰が言うともなく、川のそばでもう一泊、日没までイブニングの釣りをしようということになった。
 食糧はまだある? とチュルガンに訊ねると、充分にあるというので即座に決定、前日昼間にタイメンとレノックが釣れた場所で最後の天幕を広げることにした。
 犯人は現場に戻るというけれど、釣り人も複雑さと単純さを合わせ持っているようで、単純さが勝ると釣れた実績のある場所へ戻る。釣れた時とまったく同じ道具仕立てで、さらにひどくなると同じ場所に立って同じように左右の足を置き、たしかこうだったなと同じ流れを探る。現場に戻って捕まってしまう放火犯のように、たいていは空振りに終わってしまうのだけれどねえ。

 テント場はモンゴル最後の幕営をするのに最高の場所であった。牛馬の糞がごろごろあるのさえみな気にならなくなっていたのではないか。オノンの流れが激しく岸を削る牧草地の際の、4、5回も寝返りをうてば川に落ちてしまうほどのところにテントを立てる。釣り人は設営もそこそこに、竿を伸ばして左右に散って行く。わたくしは川岸に寝転んで流れの音を聞く。雲の去来を眺める。風の行方を思う。ウオトカとアルヒを交互に口に含む。
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河畔で過ごした日々を思ってみる。
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釣り人の背中には哀しみが宿っている。
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マルチンも例の道具でいつもの流れを探る。
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悠々として河を渡る。
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黙々と肉を食う。
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オノンの流れの彼方に日が没する。
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この残照が果てれば幕営地に夜の帳が落ちる。
by fuefukin | 2006-07-02 11:31 | モンゴル紀行(2)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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