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バスク人ザビエル500歳

 今年はモーツアルト生誕250年ということで、まさにモーツアルト・イヤー、世界中で記念の催しが開かれております。わたくしも、アマデウス250歳 としてプラハのベルトラムカ荘を訪れた折のことをすでに紹介しました。しかし同じ今年、モーツアルトの倍の500歳を迎えた、わが国ゆかりの大事な方がいらっしゃるのも忘れてはなりません。
 1506年、父ヨアン・デ・ヤスと母マリアのザビエル家6人兄弟の末子として、現在のスペイン・バスク地方ナバラ王国の貴族の家に一人の男の子が生まれました。長じてパリに赴き、パリ大学聖バルバラ学院で哲学を、ボーベ学院で神学を修め聖職者の道を歩み始めます。バルバラ学院で寮の同室になった同郷のイグナチオ・ロヨラらとともにモンマルトルの聖堂で、神に生涯を捧げるという同志の誓いを立てたのがわたくしたちもその名をよく知るイエズス会のはじまりだそうであります。
 ザビエルはヴェネチアとローマで聖地エルサレム巡礼を図っていたものの、オスマン‐トルコの勢力の拡大でなかなか果たせないうち、ポルトガル王ジョアン二世の命により、はるかインドに宣教に赴くこととなりました。1541年4月7日、5隻の帆船がリスボンから南に出発しました。ザビエル35歳の誕生日だったそうであります。
 インド西海岸のゴア到着まで喜望峰を回って1年以上費やす航海でありました。やがてゴアからマラッカに渡って布教をするザビエルは、一人の日本人と出会うことになります。鹿児島出身で、殺人を犯して逃亡して来たという話も伝わる弥次郎に日本の話を聞いたザビエルは、日本での宣教を決意し、弥次郎も伴って1549年8月15日、現在の鹿児島市祇園之洲に上陸、ここにわが国にはじめてキリスト教が伝えられたというわけであります。
 ザビエルは鹿児島から長崎、山口、京都と布教を試みること2年余、いったんインドに帰ったあと、中国への再度の航路の途上で亡くなり、遺体はマラッカ、ゴアと運ばれて埋葬されたそうであります。それにしても長い旅路の果てでありますね。
 キリスト教世界の植民地戦略の先兵という側面もありますが、航空機はもちろん鉄道などというものさえない時代のこと、まさに名も残さぬ旅人たちを代表する偉大な旅人であったと言うことができるでしょうか。

 ちなみにモーツアルトゆかりのプラハにどういう理由からか分かりませんがザビエルの像があります。有名な観光ポットですから、ご覧になった方も多いと思います。
バスク人ザビエル500歳_d0054076_1212161.jpg
 プラハの中心、ブルタヴァ川にかかるカレル橋は欄干ごとに聖人像が据えられていますが、王宮に向かって左の5番目がそれであります。まげを結った東洋人(日本人?)とおぼしき人物もザビエル聖人を支えています。どなたかここにある理由をご存じの方はご教示ください。

 つい先週ポーランドを訪れてアウシュビッツにももうでたドイツ人のローマ法王ベネディクト十六世は、サンピエトロ広場で行われた一般謁見の演説の最後に、スペイン語で4月7日の生誕500年祭に寄せて次のように述べたそうであります。
「来る4月7日にフランシスコ・ザビエル生誕500年を記念します。この偉大なイエズス会宣教者は、アジアの地で福音を宣べ伝え、キリストに向けて多くの扉を開きました。わたしもこの記念に参加して、教会にこの偉大なたまものを与えてくださったことを主に感謝したいと思います。わたしはスペインのナバラのザビエル聖堂で記念祭を司式させるために、アントニオ・マリア・ロウコ枢機卿を派遣しました。わたしはロウコ枢機卿と、この有名な巡礼地に赴くすべての巡礼者とともに記念祭に参加します。
 聖フランシスコ・ザビエルの姿を仰ぎ見るとき、わたしたちは、生涯を福音宣教にささげ、イエスの救いの知らせの美しさを告げ知らせる人びとのために祈るように招かれます。
 同時にわたしは皆様に祈ってくださるようお願いします。聖人の執り成しにより、バスク地方とスペイン全土で開きかけているように見える平和への展望への努力がいっそう深められ、前途に立ちふさがる障害を乗り越えることができますように」(カトリック中央協議会ホームページより)
 さりげなくちらりとバスク問題にも言及しているところなどちっと心憎いところがありますなあ。
by fuefukin | 2006-05-30 12:05 | 旅の写真

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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