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あふれる新緑のなかで

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 立夏もはや過ぎて、平地では日増しに緑が濃くなりつつありますが、上信国境の山々、といっても標高2000メートルに満たない源流域から流れ出す渓流ではまだまだ新緑といってもいい季節であります。山吹が咲き残り、山藤や白雲木の花は満開をやや過ぎて、欅や楢、山毛欅などの樹木の若葉が谷風に葉裏をひるがえすと、風の通り道がはっきりと見えるのですね。
 ところでいま、全国の山村で人と野生動物との生息境界がぼやけてきているようです。もちろんいまに始まった話ではありませんが、この十数年にわかに接触機会が増加し、具体的には熊との遭遇による死傷、猪や鹿、猿などによる農産物への食害が拡大しているようなのでありますね。これにはいろいろな要素がからみあって、唯一の原因を挙げることは困難でありますが、いちばんの要因は高齢化に伴う山村の過疎化、限界集落という呼び方はたいへん嫌な表現で使いたくないのですが、この限界集落の増加が第一に上げられるのではないかとわたくしは思うのでありますね。山里を捨てた都市化、個々にさまざまな事情はあるものの、都市化を推進した現代という時代、さらにはわが国の近代化の問題にまで話は踏み込まざるをえないのですね。このことはまた別の機会に言及することにしましょう。
 そんなわけでこの上信国境の山村でも、真っ昼間から猿の群れが国道沿いに出現し、通り過ぎる車は無視、車から降りて餌を投げ与えるにしろカメラを構えるにしろ、近づく人間には一定以内の距離をけして与えない。もちろん見張りのゆるい畑ではおいしい作物をとり、植えたばかりの苗を抜きとるなどの遊びともいえない暴行を働くわけであります。鹿や猪は人が寝ている夜間から早朝に畑を荒らしに出没するのですね。過疎化がすすむいっぽうの山村では、電気柵をめぐらしたり防護用の金網を張ったりなどの対症療法だけでは、もはや抗しきれないのではないかと思う昨今であります。かといって駆除ということはつまり殺害でありますから、じつに悩ましい課題であることに変わりはないのでありますね。
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by fuefukin | 2009-05-12 11:23

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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