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北への旅 7、恵みの春

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 イトウの産卵遡上行動の観察をしていた4月の連休前のある朝は冷え込んで、氷点下になりました。融雪で水浸しになった牧草地には薄い氷が張りつめ、ところどころに残っている雪や薄氷を踏んで、川沿いを行ったり来たりしながら魚を観察していたのでありますが、陽がのぼって気温が上昇してくると、みるみるうちに氷が水に変化していくのがわかります。
「氷」と「水」という文字は点がひとつあるないだけの違いですが、こうやってみると、隣り合った性質の物体をじつによく現していますね。文字を作ったひとに脱帽であります。

 さて、この時期に道北を訪れるもうひとつの理由があります。わたくしにとってはこちらの理由のほうがより割合が高いかとも思われますが、それはずばりギョウジャニンニク! 首都圏でも春になるとホームセンターなどに苗が出回り始めていますが、つい最近まではそんなことはありませんでした。関東あたりでも山地のほうでは、数は少ないもののあちこちに自生地があったようですが、環境変化、乱獲などですっかり姿が見えなくなりました。その稀少価値に目をつけたひとたちが栽培を始め、ようやく軌道に乗って小売店にまで流通するようになったというのが昨今の現状でありましょう。
 それにしてもカタクリなどと同じスプリング・エフェメラルでありますから、春一番にほかの草に先んじて生え、いち早く光を取り入れて地下茎に栄養を貯え、花をつけたあとはほかの草木に埋もれてしまいます。その春一番の生命のエネルギーを戴いてしまおうというのでありますから、自然からしてみたら人間というのは存在からして罪悪であるのかもしれません。
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 森の中をガサゴソうろついていると、こんなギョウジャニンニクをみつけました。たぶん鹿の食痕だと思われますが、春の到来を待ちわびているのは人間だけではないことを如実に教えてくれますね。
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 エゾエンゴサクの花と山ワサビ。山ワサビはホースラディッシュですね。すりおろしてしょうゆをたらせば、それだけでごはんのおかずになります。チューブ入りのワサビはこれが主原料です。

 こうしてイトウを観察し、山の恵みをいただくための毎春の道北詣ではまだまだ続くでしょう。今回は、初めてフェリーを使った北への旅でした。自宅から新潟までおよそ350キロ、新潟から小樽までの航海19時間1200キロほど、小樽から道北までおよそ400キロ、すでに帰りのクッチャロ湖や小樽の様子、船上からの夕日などアップしてありますので、これにて4000キロ近くにおよんだ北への旅の顛末はおしまい。
by fuefukin | 2007-05-25 10:30 | 旅の写真

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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