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北への旅 6、さらなる試練

 コンクリート護岸や堰堤、橋、水路など、いくつもある難関をくぐりぬけ、ようやく水通しのいい砂礫帯の、産卵に適した場所にたどり着いてうまくペアリングができあがると、♀は産卵床を掘りはじめます。身体全体を横倒しにして尾びれを大きく振るようにして水流を起こし、砂利を掘り下げ、穴を大きく深くしていくのでありますね。泥炭質の薄く茶色に濁った流れで、水面の反射も加わって、♀は陸上からははっきりと確認はできませんが、この瀬打ちのときだけはしっかり視認できます。ちなみに下の写真では、左の背中から尾びれにかけて赤く婚姻色にそまっているのが♂、右が♀であります。
 産卵床を掘るにあたって、♂の協力はありません。どうやら♀の専有行動のようであります。ほかのサケ科魚類も同様のようですが。
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 こうして適度な深さの産卵床ができあがって、機が熟すると♂♀とも大きく口を開き、産卵、放精にいたるわけですが、なかなかそううまくことは運びません。
 伐採や林道の建設による土砂の流入などの影響で、上流の産卵に適した場所が極端に狭められていることもひとつの原因かと推測されますが、産卵行動中のペアに単独の♂が割入ってくることがままあるのであります。今回もとあるペアを観察しているときにこの事態に遭遇しました。もとからいた♂は侵入してきた♂を追い払おうと、果敢に戦いを挑みます。あとからやってきた♂も、すきあらばとって代わろうと虎視眈々と狙います。こうして、追い掛けて背に乗って押し退けようとしたり噛み付いたり、ときには全身を水面にさらすこともいとわず、野生の闘争は幾度も続くのであります。
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 前回観察したときも壮絶でしたが、今回も戦いは何度か続き、一度は追われた♂が一瞬水中から全身飛び出して真っ赤な色を、水というフィルターを通さずに、直接肉眼でみることもできたのですが、ぴたりとシャッターを押したつもりの指先はずいぶん遅く、あとで確認した映像には尻尾しか写っていないというていたらくでありました。情けないでありますな。
by fuefukin | 2007-05-19 12:13 | 旅の写真

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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