人気ブログランキング | 話題のタグを見る

バルカンへの旅 18. サラエヴォからモスタルへ

 せわしなく仕事をしていたわけでもなく、遊びほうけていたわけでもないのですが、なんだかあっという間に年末、なんときょうは大つごもりですね。山積みのまま雪崩れそうな各種資料や埃の山と格闘しています。といいながら山に隠れていた楽器をとりだして弾いてみたり、積んであった雑誌やカタログを読んで捨てようか残そうか迷ったりしながらでありますが。

 さて10月2日、月曜日です。
 朝霧のサラエヴォを出発し、モスタル、トレヴィニェを経由してドブロヴニクに向かいます。モスタルまでは昨年同じ道を路線バスに乗っているので、比較的余裕を持って沿道の風景を眺めることができます。しかも今回は貸し切りバスの最前列席を確保したので、なおさら人家のたたずまいや畑の様子、川の流れなども観察できます。
 いかにも鱒の棲息していそうな、日本の里川に似た流れも見えて、次回の釣りのために下調べをしているようで参考になりました。でも気になる風景や流れが見えても即座に停めて撮影するななどどということはできません。自分で車を運転し自由にどこでも行けるようにするのが理想的なのでしょうが、西ヨーロッパあたりと違ってなかなかそうもいきませんね。
 サラエヴォ西郊にボスナ川の源をなす湧水地があって、水路や池をめぐらせて公園にしています。清冽な水が滔々と流れ、キャンプ場も併設されているらしく、季節にはサラエヴォ市民が大勢やってきてにぎわいを見せるのでしょう。養鱒場もあるということで、ボスナ水系の鱒(ブラウントラウト)も見たかったのですが、月曜ということもあったのかひと気がなくて見ることはかなわず、霧に包まれた静謐なボスナ川源流の雰囲気を楽しむだけに終わりました。
バルカンへの旅 18. サラエヴォからモスタルへ_d0054076_14565822.jpg
 ボスナ川はサラエヴォ方面からやってくるミリャツカ川やトラヴニク方面からやってくるラシュヴァ川などの小さな川をあわせてボスニア・ヘルツェゴヴィナのほぼ中央西寄りを北流、ゼニツァ、ドボイなど中小の町を貫流してクロアチア国境でサヴァ川に合流、やがてドナウから黒海へ至ります。
 サラエヴォから30キロほど、標高800メートルばかりの峠が分水嶺になります。ここを越えると水の流れは逆、ここからネレトヴァ水系、流れ下ればアドリア海に至るのであります。
 コニツァという小さな宿場町のようなところでネレトヴァ本流を横切り、道路はこの川に作られたいくつかのダム湖沿いに下っていきます。昨年はコニツァからネレトヴァ本流を上り少々フライフィッシングを楽しみました。その顛末はここに。
 ダムとダムとのあいだはこんな青い流れが谷を型づくっています。ドライブインではこのへんの名物、羊の丸焼きを味わえます。まんまと騙されましたが、水車で回しながら炭火で焼いているかに見えた羊、じつは電気モーターで回しているのでありました。
バルカンへの旅 18. サラエヴォからモスタルへ_d0054076_14585599.jpg
バルカンへの旅 18. サラエヴォからモスタルへ_d0054076_1459660.jpg

 モスタルの橋の上からネレトヴァ川に投影される橋のシルエット。モスクが見えるように右の左岸がムスリム人居住区、右岸がクロアチア人(カトリック教徒)居住区。この橋をめぐって連邦軍も加わった三つどもえの戦闘が繰り広げられたのはまだ10年ほど前のことに過ぎません。昨年のリポートもこちらでどうぞ。
バルカンへの旅 18. サラエヴォからモスタルへ_d0054076_14594886.jpg
 この上流でナチスドイツ軍とパルチザンが激戦を交わしたのも60数年前、じつに20世紀は戦争と革命の世紀でありましたね。
by fuefukin | 2006-12-31 15:00 | バルカンへの旅(2)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


by fuefukin
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31