シャンパングラス・ツリー
2005年 12月 24日
わたくしのこれまでの、短いようで長い、あるいは長いようで短い人生のなかで、漆黒の闇というのは一度だけしか経験したことがない。
疲れ果てて眠り込んでしまった狭く堅いベッドで、背中のあたりでもぞもぞ動く南京虫に起こされてしまった。目を開けているのに何も見えない。目の前で掌を動かしても指一本見えない。はて、まだ夢の中か。それとも本当に失明してしまったか。
ここはどこだ!?
たしかこのバッティ(旅籠)に着いたのはまだ夕刻、明るい時だったな。それから一晩泊まる交渉をして、そのままベッドに倒れ込んでしまった。うたたねしたまま本格的に寝入ってしまったようだ。そんなことを思い出すのに数分を要してしまう。
眼鏡はどこだ。ヘッドランプはどこだ。いまは何時だ。落ち着けと自分に言い聞かせつつも、思わず動悸が激しくなったのをいまでもよく覚えている。
静かに音を立てないように外に出てみる。ちょうど新月だったか、月明かりはない。目をこらすと、星の明かりで山の稜線がわずかに分かるほど。小屋に戻ってヘッドランプを消すと、再び漆黒の闇である。身体まで闇に溶け込んでしまう。
いまから20年近く前のネパールはアンナプルナ山麓、トレッキングルート最奥の小さな村でのことである。
さて、ときは過ぎ去り思い出は忘却のかなたへ。
シャンパングラスを積み上げて水を流し、照明で金、緑、赤と色が変わるクリスマスツリーに人々は歓声をあげる。
疲れ果てて眠り込んでしまった狭く堅いベッドで、背中のあたりでもぞもぞ動く南京虫に起こされてしまった。目を開けているのに何も見えない。目の前で掌を動かしても指一本見えない。はて、まだ夢の中か。それとも本当に失明してしまったか。
ここはどこだ!?
たしかこのバッティ(旅籠)に着いたのはまだ夕刻、明るい時だったな。それから一晩泊まる交渉をして、そのままベッドに倒れ込んでしまった。うたたねしたまま本格的に寝入ってしまったようだ。そんなことを思い出すのに数分を要してしまう。
眼鏡はどこだ。ヘッドランプはどこだ。いまは何時だ。落ち着けと自分に言い聞かせつつも、思わず動悸が激しくなったのをいまでもよく覚えている。
静かに音を立てないように外に出てみる。ちょうど新月だったか、月明かりはない。目をこらすと、星の明かりで山の稜線がわずかに分かるほど。小屋に戻ってヘッドランプを消すと、再び漆黒の闇である。身体まで闇に溶け込んでしまう。
いまから20年近く前のネパールはアンナプルナ山麓、トレッキングルート最奥の小さな村でのことである。
さて、ときは過ぎ去り思い出は忘却のかなたへ。
シャンパングラスを積み上げて水を流し、照明で金、緑、赤と色が変わるクリスマスツリーに人々は歓声をあげる。
by fuefukin
| 2005-12-24 10:04
| イメージ写真