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バルカンへの旅——11、ブナ川でフライフィッシング

 モスタルの街にある二つのツーリストインフォメーションで、「ネレトヴァ川周辺で釣りをしたい、ライセンスはどこで買える?」と訊ねてみても、さっぱり要領を得ない。フィッシング協会のようなところがあるらしいが、「きょうは日曜だから休み」、場所を聞いても古橋を渡ったあのへんというばかりで、街のガイドマップを広げて見せても結局判然としないままホテルに戻った。
 ホテルのフロントで同じ質問をした。するとフロントの若い女性はしばらく考えたあと、あそこに行けば分かると言って、ガイドマップにボールペンで丸印を書いてくれた。そこはどんなところなのかと聞くと、ハンティングとフィッシングの店だと言う。なるほど、それならいいかもしれない。
 ホテルから10分ほど、教えられたあたりで軍隊の施設らしい敷地の門前の守衛に訊ねる。どうも道路の反対側のようだ。渡りかえして建物の周囲をぐるぐる回って探していると、先刻所在を聞いた守衛が、こっちだこっちだというように手招きしている。ありがたいことに、わざわざ教えに来てくれたのだ。礼を言って店に入った。
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 日本のどこにでもある釣具店と変わらない風景がそこにあった。天井近くには大きな60センチ、70センチのブラウントラウトの剥製がいくつも掲げられている。2メートルほどもあるウナギの剥製まである。大西洋のどこかで生まれ、地中海からアドリア海を泳いで、ネレトヴァ川を遡って来たウナギだな。
 店番をしていた英語のしゃべれない母親は息子を電話で呼び出した。ワンデイライセンス5ユーロ(10ボスニアマルク)、日本円にすると700円くらいになる。やれやれ、釣り券を手にするまで2日もかかってしまった。
 ネレトヴァ川本流の釣りでは前日も見て確認したが、流れが太く深いので、おまけに河原らしいところがほとんどないため、ちょうど日本のアユのドブ釣りと同じような仕掛けで釣りをするようだ。日本と違うのはリールを使うこと。
 息子はさかんにこの仕掛けを使えとすすめるが、ぼくがこうキャスティングするんだとロッドを前後に振る仕草をすると、「シングルフライかい?」とちょっと驚いたような表情だ。それじゃあ釣れないぞと言おうとして、あわててその言葉を飲み込んだようだ。
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 さて翌朝早く、釣具店で教えてもらったネレトヴァ川支流ブナ川へ向かうべくバスターミナルでタクシーをつかまえた。1時間ほど後、ブナ川を渡る橋のある小さな集落でタクシーを降りた。
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 ブナ川はこんな川だった。釣り始めてすぐ、水車のための水路が本流に出る小さな流れで20センチほどのニジマスがカディスに飛び出した。幸先がいいぞ。
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 しかし、あとが続かない。しかも本流は幅広く、徒渉するにも深すぎる。どうもぼくの腕とタックルでは太刀打ちできない。だんだん途方に暮れて、昼飯代わりのリンゴをかじり、水をのみ、笛を吹いて、しまいには木陰で昼寝ときたもんだ。
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by fuefukin | 2005-10-17 17:51 | バルカンへの旅(1)

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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