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農民歌舞伎を見る

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 もう10日ほども前のことになるが、西多摩あきる野市菅生にある正勝神社秋祭りで、地域で伝承されてきた農民歌舞伎が演じられるというのでちょっと見学にでかけてまいりました。農民歌舞伎といえば、役者から裏方まで、村人の手だけで江戸時代中期から260年以上も連綿と継続されてきた福島県檜枝岐村の檜枝岐歌舞伎が有名で、毎夏、鎮守神境内にある常設舞台で奉納上演されているが、ごくごく近所の多摩川の対岸で今回拝見したような歌舞伎がやられていたなんて、寡聞にして知らなかったのは迂闊でありました。

農民歌舞伎を見る_d0054076_3561057.jpg 多摩川支流の秋川、平井川流域にまたがるあきる野市には、明治のいつごろからか二宮神社の神楽師が始めた歌舞伎を源流に、近在で興行するセミプロの集団が生まれ、そこから田舎芝居として農民(素人)歌舞伎が派生してきたらしい。テレビはおろかラジオ、映画さえなかった時代には、おそらく地域の神社などの祭りと結びついて格好の娯楽になっていたのだろうが、映画が大衆化し、やがてテレビへ娯楽の主役が移っていくにつれて衰退していったのは時代の流れというものか。時代が平成に変わったころ歌舞伎用の各種小道具が残っているのが調査から判明し、子供歌舞伎を皮切りに復活上演が試みられるようになる。組立式の舞台が残されていたこともさいわいしたのでしょう。そうして現在は市内にある三つのグループがそれぞれ地域の祭礼などにあわせて得意の演目を上演しているということであります。
 菅生の組立舞台は丸太と縄だけを使って、間口6間もしくは8間の舞台を組み上げるというもので、もちろん釘などはいっさい使用しない。骨組みそのものは明治時代の末ごろに完成されたものらしく、この組立舞台そのものが東京都の有形民俗文化財に指定されている。中央に回転装置、つまり回り舞台まで装備されているのには驚いた。照明が点灯している間口8間の全体像はこんな具合。観客席は地面にシートを敷いただけで、一杯やりながら舞台を見上げている人たちもいて、村芝居の雰囲気はたっぷり。
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 この日の菅生一座の演目は「寿曾我対面」「水戸黄門漫遊記」「絵本太功記十段目」。まん中にはさまれた水戸黄門の田舎芝居も含めて、すべて地元住民が役者になって演じたらしい。あとで調べてみたら、絵本太功記の女形・初菊役も地元の市議さんでした。わたくしは途中から観劇したので、以下、撮影できた「絵本太功記十段目」からいくつかの場面をご覧ください。西の山の端に日が落ち、徐々に闇が濃くなっていく中で演じられた歌舞伎、熱演もあいまってなかなか見応えがありましたね。
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 そしてカーテンコールに拍手喝采。
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 場面は前後するが動画でもご覧あれ。


by fuefukin | 2010-10-06 05:06 | 歴史散歩

日常の延長に旅があるなら、旅の延長は日常にある。ゆえに今日という日は常に旅の第一歩である。書籍編集者@福生が贈る国内外の旅と日常、世界の音楽と楽器のあれやこれや。


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